前日「マグネッットがつく壁をつくる」で磁石がつく壁を作りました。軽い書類程度は貼れるようになりましたが、もっと重いものを付けようとすると磁力が足りません。磁力を上げるには磁石を強くすることを考えますが、結論から言うと問題は壁に埋め込んだシートにあります。
埋め込んでしまってから言うのはどうなの??というツッコミもあると思いますが今回は適正なシート厚さはどのくらいだったのかを検証してみたいと思います。下の写真は前回使ったステンレスシートを切り出したものです。厚さが0.1mmのSUS430のシートです。実際には磁石とシートの間に塗料もあるので少し状況は変わりますが今回はその分を無視して検証を進めます。
厚さ0.1mmのSUS430と φ3x10mmのネオジム磁石
今回はシートの厚さと磁力の関係を検証したいので、0.1mmのシートをはさみで適当な大きさに切ります。だいたい10枚くらいあれば十分だと思います。
ステンレスシートはハサミで切れます
先ほど切断したシートを磁石で吸引してみます。今回用意した磁石は
①ネオジム磁石(小)(Φ3mm×10mm)
②ネオジム磁石(大)(10mm×10mm×5mm)
③フェライト磁石(7mm×7mm×7mm)
です。それぞれ何枚までつけることができるか様子をみてみましょう。
①の結果 5枚程度つきます
②の結果 10枚つきます
③の結果(左の磁石) 2枚だけです
①5枚,②10枚,③2枚です。
さらに、シート枚数が多い時の方が磁石の吸着力が大きくなっていることを体感できると思います。つまり、シートの厚さが薄い(シート枚数が少ない)と磁石の力を最大限引き出せていないことがあります。今回の場合②のような強いネオジム磁石を0.1mmのSUS430シートにつけても、磁石の無駄使いになります。②の磁石には1.0mm以上の厚さがあると良いでしょう。
逆に③のフェライト磁石の場合にはもともと磁力が弱いのでシートの厚さは0.2mm程度で十分です。
このように吸着力が弱いと思う時、磁石だけではなくつける鉄板の厚さも大事だということなのです。
もう少し詳しく、、、といいますか難しくいうなら
磁石が鉄板を吸着する力は
【磁石が発生する磁界】×【磁石が発生する磁界の勾配】×【鉄板の磁化】×【鉄板の体積】
に比例します。[※実際には上記の値は3次元に分布します(均一ではない)ので簡単に計算することができません。わたしたちはコンピュータに有限要素法という方法で計算させています、これを一般的に磁場解析などと言っています]
大雑把に捉えると
磁石が発する磁界と磁界の勾配は磁石の性能に依存する。
鉄板の磁化と鉄板の体積は鉄板に依存する。
ので、言い換えると磁石に依存する項目と鉄板に依存する項目の積が吸着力に比例するので、鉄板に依存する項目が異常に小さい場合どんなに磁石に依存する項目を大きくしようとしても効率が悪くなります。両者のバランスが重要ということなのでしょう。